ピックが指の間で回る。ポジション移動でネックに手が引っ掛かる。弦を替えてもすぐにサビが気になる。同じ「手汗の悩み」でも、困っている場所によって役立つ対処は違います。
まずは手と楽器に残った汗を拭き、それでも気になる場所を確かめましょう。この記事では、ギター・マガジンに掲載されたギタリストの選択やリペアの解説を手がかりに、追加購入なしの手入れと、試す理由のある用品を紹介します。
最初に、どこで困るかを分ける
| 困っていること | まず試すこと | 改善しなければ検討すること |
|---|---|---|
| ピックが回る・落ちる | 手とピックの汗を拭き、いつものフレーズを弾く | 持つ部分に滑り止めがあるピック |
| ネック裏に手が引っ掛かる | 手とネック裏を拭き、同じポジション移動を試す | 塗装や汚れの状態を工房に相談 |
| 弦やブリッジのサビが気になる | 演奏後に弦の裏側と、触れた金属部分まで拭く | コーティング弦、使用中の弦に適合するケア用品 |
拭く前後を同じフレーズで比べるのは、自分の対処を選ぶための提案です。商品の効果をこちらで比較測定した結果ではありません。
ピックが滑るなら、持つ面を変えてみる
東京スカパラダイスオーケストラでギターを担当する加藤隆志さんのオリジナル・ピックは、汗をかいても滑りづらいよう、表面がざらついた素材になっていると紹介されています。ピックを持つ面に着目する、具体的な手がかりです。1
市販品で同じ方向の対処を試す候補が、MASTER 8 JAPANのINFINIX + Hard Gripです。メーカーは、透明素材のサンドグリップを使った滑り止めを説明しています。ここで紹介するのはTRIANGLEの0.6mm。加藤さんのピックとは別の商品です。2
まずは今のピックに近い形・厚みを選び、持ち直す回数が減るか、ストロークや単音弾きに違和感がないかを確かめましょう。紹介品は三角形の薄めのピックなので、小型で厚いピックを使っている人は、握り心地以外の違いも大きくなります。同シリーズには0.8mmと1.0mmもあります。滑りにくさだけで決めず、音やしなりも含めて選んでください。2
汗を拭いてもずれるうえ、滑り止め付きでも弾きにくい場合は、手持ちのピックの別の形や大きさも比較してみましょう。さらに強く握ることだけを解決策にせず、保持しやすさと弾きやすさの両方を見るためです。
ネックが引っ掛かるなら、裏側か指板側かを確かめる
工房Pathの代表としてリペアを解説する石川哲也さんは、湿気や手汗によるネック・グリップの滑りづらさを取り上げ、特にグロス仕上げの摩擦感に触れています。同じ記事では、塗装表面を研磨して手触りを変える加工も紹介されています。3
手持ちのギターでは、まず柔らかい乾いたクロスでネック裏を拭き、手も拭いてから、いつも引っ掛かる移動を試しましょう。Fenderも日常の手入れとして、弦・ネック・ブリッジを毛羽の出にくい布で拭くことを勧めています。4
清掃後も引っ掛かりが続くなら、工房へ「手が乾いている時と汗ばんだ時で、移動のしやすさがどう変わるか」を伝えて相談するのが次の一手です。誌面の研磨は塗装表面を変える加工なので、日常の拭き取りとは分けて考えましょう。
指先が指板側で引っ掛かる場合には、別の比較もあります。SCANDALのギタリスト、MAMIさんは、自身が手汗をかくことに触れ、ローズウッド指板ではスライド時に若干の引っ掛かりを感じ、メイプル指板を好むと話しています。これは本人の使用感です。指板材だけで全員の滑りやすさを決めず、買い替えを考える時の試奏項目として、自分が使うスライドを加えるとよいでしょう。5
サビが気になるなら、まず弦の裏側まで拭く
石川さんの別の解説では、金属パーツの腐食を進める要因として手汗の塩分が挙げられています。弦だけでなく、ブリッジ周辺のネジもサビで調整できなくなる場合があるため、触れた部分を演奏後に拭くことが基本になります。6
弦は表面だけで終えず、クロスで裏側まで包むようにして拭くのが誌面のポイントです。手のひらを置いたブリッジなども、届く範囲で柔らかい乾いた布で拭きましょう。74
次に弾く時、弦のざらつきやサビがどれくらい気になるかを見てください。すでにサビが出た弦を拭くだけで新品同様に戻そうとせず、交換を検討します。ネジが固着して調整できない場合は、工房への相談に進みましょう。
弦を替えるなら、コーティング弦を同じゲージから
ポルノグラフィティのギタリスト、新藤晴一さんは、手汗をかくことや、録音時に弦の状態を気にすることに触れ、Elixirを使う理由を話しています。特定の音が全員に最良という話ではなく、弦の状態をなるべく安定させたいという選択です。8
具体的な候補は、Elixirのエレクトリック用OPTIWEB。巻き弦の保護と、プレーン弦のAnti-Rust処理を備え、メーカーはノンコーティング弦に近い自然なグリップ感を説明しています。汗や汚れによる弦の劣化が気になり、感触の違いも確かめたい人向けです。新藤さんの誌面発言から、使用しているコーティングの種類や型番までは特定できません。9
19052は.010–.046のセットです。今この太さを使っている人の例として挙げており、手汗対策として全員に弦を太くする提案ではありません。まず現在の弦の太さを確認し、同じゲージを選ぶと比較しやすくなります。9
交換した日を控え、普段と近い練習の頻度で、サビやざらつきが気になるまでの期間と、音・感触の好みを見てください。交換の手間が減り、弾き心地にも納得できるなら続ける理由になります。感触が合わなければ、別の弦へ戻すことも含めて選びましょう。
今の弦を手入れするなら、ケア用品との適合を先に確認
ギター・マガジンでは、弦を拭いた仕上げにFAST-FRETのような弦用潤滑剤を使う方法も紹介されています。GHS A87 FAST-FRETは、薬剤を含むパッドで使う、非スプレー式の用品です。メーカーはクリーナーとして、国内代理店は汚れの除去と弦表面の防錆を説明しています。71011
ただし、Elixir公式はクリーナーや潤滑剤の使用を推奨していません。OPTIWEBに追加する用品として選ぶのではなく、使用中の弦のメーカーが認める手入れ方法を確認したうえで検討してください。Elixirでは演奏後の乾拭きが案内されています。12
FAST-FRETを選ぶ場合も、製品の使用方法に従い、手入れ後の汚れの残り方と弾き心地で判断します。指を滑らせるための用品は、ピックの滑り止めとは役割が違います。潤滑後の感触が好みに合わなければ、乾拭きを中心にするか、次の交換で弦自体を見直すほうがよいでしょう。
出典・参考資料
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『ギター・マガジン』2024年8月号「Interview 加藤隆志 東京スカパラダイスオーケストラ」、誌面86ページ、オリジナル・ピックの写真説明。 ↩
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MASTER 8 JAPAN, INFINIX + Hard Grip – TRIANGLE(10pcs)、滑り止めと厚みの仕様。2026年10月20日確認。 ↩ ↩2
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『ギター・マガジン』2024年6月号「工房Path ギタマガ出張所 第30回 グロス・フィニッシュ・ネックのスムース加工」、誌面168ページ。 ↩
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Fender, 5 Tips for Cleaning Your Guitar、日常の拭き取りと金属部分の手入れ。2026年10月20日確認。 ↩ ↩2
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『ギター・マガジン』2018年1月号「Domestic Guitarist's Signature/MAMI Special Interview」、誌面37ページ。 ↩
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『ギター・マガジン』2023年10月号「工房Path ギタマガ出張所 第22回 ギターと多湿について」、誌面166ページ。 ↩
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『ギター・マガジン』2023年10月号「工房Path ギタマガ出張所 第22回 ギターと多湿について」、誌面167ページ。 ↩ ↩2
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『ギター・マガジン』2023年9月号「新藤晴一 ポルノグラフィティ Interview」、誌面92ページ。 ↩
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Elixir, エレクトリック OPTIWEBコーティング弦、コーティング、Anti-Rustプレーン弦、19052のゲージ。2026年10月20日確認。 ↩ ↩2
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モリダイラ楽器, A87 FAST FRET、パッドによる使用、汚れ除去と防錆の説明。2026年10月20日確認。 ↩
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Elixir, よくある質問、演奏後の乾拭き、クリーナー・潤滑剤を推奨しない手入れ方針。2026年10月20日確認。 ↩